訪問看護を一言で言うと: 看護師等が自宅を訪問し、主治医の指示のもとで療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。 対象者: 要支援・要介護認定を受け、主治医が訪問看護の必要を認めた方。40〜64歳は特定疾病該当者。 メリット: 医療保険より自己負担が軽い場合が多く、介護保険1割負担なら30分未満の訪問1回で500円前後に収まります。
「訪問看護って、一体いくらかかるの?」「医療保険と介護保険で料金はどう違うの?」——初めて訪問看護を検討する家族にとって、費用の見通しが立たないことは最大の不安です。
この記事では、令和6年度(2024年4月)介護報酬改定に対応した訪問看護の料金体系を、介護保険・医療保険・自費の3つに分けてわかりやすく整理します。1割負担・2割負担・3割負担のそれぞれで「月にいくらかかるか」の目安もまとめました。ケアマネジャーに相談する前に、費用の全体像をつかんでおきましょう。
訪問看護とは — 制度の概要
訪問看護は、看護師・保健師・准看護師・理学療法士などが利用者の自宅を訪問し、主治医の指示書に基づいて療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。介護保険法第8条第4項に「居宅要介護者について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助」と定義されています。
訪問看護の提供元は大きく2つで、訪問看護ステーションと、病院・診療所の看護部門に分かれます。どちらを利用するかで費用計算のベースとなる単位数が変わるため、ケアプラン作成時に確認しておきましょう。
介護保険で訪問看護を利用するには、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受け、主治医が訪問看護指示書を発行する必要があります。指示書は原則6か月ごとに更新されます。
ポイント
- 目的: 在宅療養を支え、医療的ケアを必要とする方の生活の質を維持する
- 根拠法令: 介護保険法第8条第4項(訪問看護の定義)、同法第41条(居宅介護サービス費の支給)
- 管轄: 厚生労働省(制度設計)/市区町村(保険者)
- 開始時期: 2000年(平成12年)4月、介護保険制度と同時にスタート
田中さん(仮名・68歳/要介護2)の例: 脳梗塞後の在宅リハビリで、訪問看護ステーションから週2回(1回30分)の訪問を受けています。介護保険1割負担で、月の自己負担は約4,200円に収まっています。
訪問看護の費用はどう決まる? — 介護保険・医療保険・自費の3ルート
訪問看護の自己負担額は、どの保険を使うかで大きく変わります。このセクションでは3つのルートを整理します。
訪問看護を利用するとき、費用を負担する仕組みは次の3通りです。
- 介護保険ルート: 要介護認定者が原則利用する。自己負担1〜3割
- 医療保険ルート: 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方・40歳未満の方・精神科訪問看護などが対象
- 自費ルート: 保険給付の対象外となるサービス(時間延長・深夜対応など)
どのルートになるかはケアマネジャーと主治医の判断で決まり、利用者側で自由に選べるわけではありません。とはいえ、自分がどのルートに該当するかを知っておくと、料金表の読み方が一気にわかりやすくなります。
介護保険と医療保険の切り分けルール
原則として、要介護認定を受けている方は介護保険が優先されます。ただし、次のいずれかに該当する場合は医療保険での訪問看護となります。
- 「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表第7:末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症ほか)に該当
- 主治医が「特別訪問看護指示書」を交付した期間(原則14日以内)
- 精神科訪問看護(精神科訪問看護指示書に基づくもの)
このルールは令和6年度改定でも変更されていません。判断に迷うときは、主治医または訪問看護ステーションに「この方は介護保険と医療保険のどちらで算定しますか」と確認するのが確実です。
介護保険の訪問看護料金 — 令和6年度改定対応の単位数
介護保険での訪問看護は、「1単位=10円(地域により9.50〜11.40円)」を基準に、訪問時間と提供者で単位数が決まります。令和6年度(2024年4月)改定では、基本報酬の見直しに加えて複数の加算が再編されました。
訪問看護ステーションから看護師等が訪問する場合の基本単位数(令和6年度)
| 訪問時間 | 単位数(2024年度) | 1単位10円換算 |
|---|---|---|
| 20分未満 | 314単位 | 3,140円 |
| 30分未満 | 471単位 | 4,710円 |
| 30分以上1時間未満 | 823単位 | 8,230円 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 1,128単位 | 11,280円 |
※出典: 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項」(単位数は地域区分により1単位10円以外の換算となります)
この単位数に利用者の自己負担割合(1〜3割)を掛けた額が、1回あたりの自己負担額の基本部分です。1割負担の方が30分未満の訪問を受けた場合、4,710円の1割で約471円が1回あたりの自己負担となります。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問する場合
訪問看護ステーションから理学療法士等が訪問する場合は、1回20分あたり294単位(令和6年度改定で295単位から見直し)です。1日に2回を超えて実施する場合は、それぞれの単位数が100分の90に減算されます。
さらに、週に6回を超える場合も90%算定となる規定が令和6年度改定で導入されました。リハビリ目的の訪問看護を多く利用している方は、ケアマネジャーと頻度の見直しを相談するとよいでしょう。
主な加算(令和6年度改定対応)
- 緊急時訪問看護加算Ⅰ: 月600単位(24時間対応体制+看護体制強化)
- 緊急時訪問看護加算Ⅱ: 月574単位(24時間対応体制のみ)
- 特別管理加算Ⅰ: 月500単位(気管切開・人工呼吸器等)
- 特別管理加算Ⅱ: 月250単位(留置カテーテル・褥瘡等)
- 初回加算: 月300単位(新規利用開始月)
- サービス提供体制強化加算: 6単位/回 ほか区分あり
加算は「契約した訪問看護ステーションがどの体制を取っているか」「利用者の医療的状態」によって自動的に付きます。ケアプランに明記されるので、交付時に内容を確認しましょう。
自己負担の月額目安 — 要介護度・利用頻度別シミュレーション
「結局、月にいくらかかるの?」に答えるため、具体的な利用パターンで試算します。すべて2024年度(令和6年度)単価・1単位10円・地域加算なし・1割負担で計算しています。
月額シミュレーション(介護保険・1割負担)
| 利用パターン | 月の訪問回数 | 基本料金の合計 | 1割自己負担の目安 |
|---|---|---|---|
| 軽度(週1回・30分未満) | 4回 | 約18,840円 | 約1,884円 |
| 標準(週2回・30分以上1時間未満) | 8回 | 約65,840円 | 約6,584円 |
| 重度(週3回・1時間未満+特別管理加算Ⅰ) | 12回 | 約103,760円 | 約10,376円 |
上記に緊急時訪問看護加算Ⅰ(月600単位=6,000円)を付けると、1割負担で月600円の上乗せとなります。いずれも区分支給限度基準額の範囲内であることが前提です。
2割・3割負担の場合
所得に応じて自己負担が2割または3割になる方は、単純に目安額を2倍・3倍してください。例えば標準パターン(週2回)の3割負担なら月19,752円程度が自己負担となります。
1か月の自己負担額が一定額を超えた場合は、高額介護サービス費の払い戻し対象となります。詳しくは「高額介護サービス費の申請方法」をご確認ください。
申請手順 — 訪問看護を利用開始するまでの5ステップ
訪問看護は「主治医の指示書」が必須のため、介護保険の通常サービスより一手間多い流れになります。ここでは初回利用までの5ステップを整理します。
Step 1: 要介護認定を受ける(未取得の方)
市区町村の介護保険窓口で要介護認定を申請します。訪問調査と主治医意見書をもとに30日以内に結果が通知されます。
Step 2: ケアマネジャーに相談する
要介護1以上の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに、要支援の方は地域包括支援センターに相談します。訪問看護を組み入れたケアプランを作成してもらいます。
Step 3: 主治医に訪問看護指示書を依頼する
主治医(かかりつけ医)に訪問看護指示書を発行してもらいます。指示書は訪問看護ステーションに直接送られます。指示書料は医療保険から支払われるため、利用者負担はありません。
Step 4: 訪問看護ステーションと契約する
ケアマネジャーが候補となる訪問看護ステーションを紹介します。初回訪問で看護計画を立て、利用者・家族と契約を結びます。
Step 5: サービス開始と費用の請求
サービスは原則月単位で提供され、自己負担分は翌月以降に請求されます。多くの事業所で口座振替・現金・請求書払いのいずれかを選べます。
申請に必要なもの
- 介護保険被保険者証
- 介護保険負担割合証
- 訪問看護指示書(主治医が発行・事業所へ直送)
- 健康保険証(医療保険適用の可能性に備えて)
- 本人確認書類(契約時)
申請先
契約の窓口は訪問看護ステーションです。ただし、ケアプランの変更は担当ケアマネジャーを経由して行います。
訪問看護でよくある質問(FAQ)
訪問看護の費用に関する質問は以下の5つに集約されます。
- 介護保険と医療保険はどちらが安い?
- 自己負担が高額になったら軽減制度は使える?
- 交通費は自己負担?
- 土日・祝日の訪問は追加料金になる?
- 区分支給限度基準額を超えたらどうなる?
それぞれの答えを確認して、ケアマネジャーとの面談準備にお役立てください。
Q: 介護保険と医療保険、どちらで利用したほうが自己負担は安い? A: 一概には言えません。介護保険は自己負担1〜3割・区分支給限度基準額あり、医療保険は自己負担1〜3割・高額療養費制度ありという構造の違いがあります。要介護認定を受けている方は原則介護保険が優先されるため、主治医・ケアマネジャーの判断に従えば問題ありません。
Q: 自己負担が高額になった場合、軽減制度はありますか? A: あります。月の自己負担が一定額を超えた分は高額介護サービス費として払い戻されます。2024年度時点で、住民税非課税世帯は月24,600円、一般世帯は月44,400円が上限の目安です。詳細は市区町村の介護保険窓口にご確認ください。
Q: 看護師が訪問するときの交通費は自己負担になりますか? A: 介護保険・医療保険のいずれでも、通常の訪問範囲内であれば交通費は報酬に含まれ、自己負担は発生しません。ただし、事業所が定める通常訪問範囲を超える遠距離の場合、実費相当の交通費が別途請求されることがあります。契約時に説明を受けましょう。
Q: 土日・祝日や夜間の訪問は追加料金になりますか? A: 介護保険の場合、時間帯によって加算が付きます。早朝(6〜8時)・夜間(18〜22時)は25%加算、深夜(22〜翌6時)は50%加算が基本です。日祝日そのものに対する加算はなく、必要に応じてケアプランで調整されます。
Q: 区分支給限度基準額を超えて訪問看護を利用したらどうなりますか? A: 超えた部分は全額自己負担(10割)となります。医療的ケアが多い方は、訪問看護分が限度額を圧迫しやすいため、ケアマネジャーと「介護保険と医療保険の振り分け」「他サービスの調整」を早めに相談することをおすすめします。
まとめ — 次の一歩は「ケアマネ相談前の質問リストづくり」
訪問看護の費用は、介護保険なら30分未満の訪問で1割負担約500円前後、週2回の標準利用で月6,000円台が目安です。令和6年度(2024年4月)改定で基本報酬・加算が再編されたため、2024年3月以前の情報は必ず最新版で確認しましょう。
費用の全体像がつかめたら、次にやるべきは「自分の状況で実際いくらかかるか」の試算です。要介護度・提供元(ステーション/病院)・訪問頻度・加算の組み合わせによって月額は2倍以上変わります。担当ケアマネジャーに相談する前に、主治医から「訪問看護が必要か」「週何回を想定するか」を聞き、そのメモを持参すると面談が一気にスムーズになります。
ただし、加算の適用可否や医療保険への切り替え判断は専門家でなければ正確に判断できません。お住まいの地域包括支援センターまたは担当ケアマネジャーに電話1本、今日中の確認をおすすめします。「訪問看護を検討している、費用感を知りたい」と伝えるだけで、具体的な事業所紹介と試算まで一気に進みます。
相談窓口を探す方へ
この記事は2026年4月時点の情報です。 制度・単価は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」またはお住まいの市区町村の介護保険課にお問い合わせください。
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