初めての介護、何から始める?完全ガイド【2026年最新】

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親の物忘れが増えた、退院後の生活が心配、自分の体がつらくなってきた——ある日突然、「介護」という言葉が自分ごとになります。何をすればいいのか、どこに相談すればいいのか、いくらかかるのか、仕事は続けられるのか。不安は一度に押し寄せ、検索しても専門用語ばかりで頭に入らない。そんな方のために、このガイドでは**「最初の1週間で何をすればよいか」から「使える制度・費用の実額・申請の流れ」**まで、公式情報をもとに全体像をまとめました。

読み終わる頃には、今日やること・今週やること・今月やることが明確になります。迷ったら #section-action から読んでも構いません。すべての情報は厚生労働省および介護保険法・介護保険法施行令にもとづいています(2026年4月時点の情報)。

介護制度の全体像 — まず知っておくべきこと {#section-overview}

日本の介護保険制度は「社会全体で介護を支える」仕組み

介護保険制度は2000年(平成12年)4月にスタートした、日本で最も新しい社会保険制度です。それまで家族(主に女性)が一手に担っていた介護を、社会全体で支えることを目的に生まれました。根拠法令は介護保険法(1997年制定)で、保険者は全国の市区町村と特別区、運営の中心は各自治体の介護保険課です。

制度の基本は「40歳以上の全国民が保険料を負担し、必要なときにサービスを原則1割負担で利用できる」というもの。公的医療保険と似た仕組みですが、利用にあたって「要介護認定」という入口の手続きが必要になる点が大きく異なります。

知っておきたい: 介護保険は「いくら払ったか」ではなく「どれくらい介護が必要か(要介護度)」で使える金額が決まる制度です。保険料を多く払っても給付額は増えません。

被保険者は「第1号」と「第2号」の2種類

介護保険の加入者(被保険者)は年齢によって2つに分かれます。

区分 年齢 対象 利用条件
第1号被保険者 65歳以上 全員(強制加入) 要介護・要支援認定を受ければ原因問わず利用可
第2号被保険者 40歳〜64歳 医療保険加入者 特定疾病(16種類)が原因の場合のみ利用可

第2号被保険者の「特定疾病」とは、加齢に伴って発症しやすい病気で、具体的には末期がん・関節リウマチ・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・脳血管疾患・若年性認知症・パーキンソン病関連疾患など16疾病が指定されています。50代で脳梗塞の後遺症が残った方、若年性認知症と診断された方なども、この制度で介護サービスを利用できます。

介護保険で使えるサービスの全体マップ

[図解1: 介護保険サービスの全体マップ]

介護保険で使えるサービスは、大きく4つのカテゴリに分けられます。

  1. 居宅サービス(在宅で受ける) — 訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、短期入所(ショートステイ)など
  2. 施設サービス(施設に入所する) — 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院
  3. 地域密着型サービス(住み慣れた地域で受ける) — 小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護など
  4. 福祉用具・住宅改修(環境を整える) — 車いす・ベッド等のレンタル、入浴用品等の購入補助、手すり設置などの住宅改修費支給

これら4カテゴリをどう組み合わせるかは、ご本人の要介護度・生活状況・家族構成・希望によって千差万別です。組み合わせを設計する専門家が後述するケアマネジャーです。

費用負担の仕組み — なぜ1割で使えるのか

介護サービスを使ったときの費用は、利用者が1〜3割残りを介護保険が負担します。残り分は公費(税金)と介護保険料で半分ずつまかなわれる仕組みです。

自己負担割合は所得によって決まります(2026年度時点)。

  • 1割負担: 全体の約80%の方(住民税非課税世帯、一般的な年金収入の方など)
  • 2割負担: 全体の約16%の方(本人の合計所得金額160万円以上等)
  • 3割負担: 全体の約4%の方(本人の合計所得金額220万円以上等)

自分が何割になるかは、要介護認定を受けると毎年7月末に届く「介護保険負担割合証」に記載されます。詳しくは介護保険負担割合証とは?1割・2割・3割の判定基準と確認方法をご覧ください。

注意: 「1割だから安い」と思っても、使えるサービスには**要介護度ごとの上限額(区分支給限度額)**が決まっています。上限を超えた分は全額自己負担(10割)になります。この仕組みを理解しておくことが、費用を抑える第一歩です。

介護に関わる人たち — 誰に相談すればいい?

介護が始まると、さまざまな専門職が関わります。最初の窓口を押さえておけば、あとは専門家がつないでくれます。

役割 説明 最初の相談先として
地域包括支援センター 中学校区ごとに設置された、高齢者の総合相談窓口。保健師・社会福祉士・主任ケアマネが常駐 まずここ
ケアマネジャー(介護支援専門員) ケアプラン(介護計画)を作成する専門職。要介護1以上ならほぼ必須 認定後に選定
市区町村の介護保険課 要介護認定の申請窓口、保険料の管理 申請時
主治医(かかりつけ医) 認定に必要な「主治医意見書」を記載 認定申請時に依頼
地域包括支援センターの保健師・社会福祉士 要支援1・2の方のケアプラン作成も担当 要支援認定後

迷ったら地域包括支援センター(通称:包括) というのが、この制度の鉄則です。「介護のことで相談したい」と電話すれば、その後の手続きや制度活用まで一緒に並走してくれます。相談は無料、予約なしでも受け付けてくれる場合が多いです。

要介護認定の流れ — 申請から結果まで30日 {#section-certification}

認定がなければ介護保険は使えない

介護保険のサービスを利用するには、市区町村から「要介護認定」を受ける必要があります。いきなりヘルパー派遣を依頼することはできません。「要介護度(要支援1・2、要介護1〜5の7段階、または非該当)」が決まって初めて、使える金額とサービスの範囲が確定します。

申請から結果が届くまでの標準期間は原則30日以内(介護保険法 第27条第11項)。長引いても通常40日程度です。迅速な対応が必要な場合は、「暫定ケアプラン」で先行利用することも可能です。

Step 1: まずは相談(ここから始める)

まず最初にやることは、地域包括支援センターに電話することです。「介護について相談したい」と伝えるだけでOK。この1本の電話が、その後すべての起点になります。

相談時に伝えるとスムーズな情報:

  • 対象者の氏名・年齢・住所
  • 現在の状態(歩行、食事、トイレ、入浴、物忘れの様子)
  • いつから症状があるか
  • 家族の構成(同居か別居か)
  • かかりつけ医の有無
  • 本人の意向(在宅希望か施設希望か未定でもOK)

地域包括支援センターは中学校区ごとに設置されており、全国で約5,400か所あります。お住まいの地域の窓口は「(市区町村名) 地域包括支援センター」で検索するか、市区町村のホームページから探せます。

Step 2: 申請

申請は**市区町村の介護保険課(高齢福祉課など名称は自治体により異なる)**で行います。本人または家族が窓口に行くのが基本ですが、本人が動けない場合は以下も可能です。

  • 代行申請: 地域包括支援センター、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)、介護保険施設
  • 郵送申請: 多くの自治体で可能
  • オンライン申請: 一部自治体で対応(マイナポータル経由等)

必要書類:

  1. 介護保険被保険者証(65歳の誕生月に届いた緑色または青色のカード)
  2. 健康保険証(40〜64歳の第2号被保険者)
  3. 主治医の氏名・医療機関名(意見書は市区町村から医師へ直接依頼)
  4. 申請書(窓口または市区町村HPで取得)
  5. マイナンバーカード等の本人確認書類

費用は無料です。申請に手数料はかかりません。

Step 3: 認定調査

申請後、**調査員(市区町村の職員または委託された介護支援専門員)**が自宅を訪問します。所要時間は60〜90分程度。本人と家族(介護者)が同席するのが理想です。

調査員は**全国共通の74項目(基本調査)**に沿って、本人の心身の状態を確認します。主な項目は次の5分野。

  • 身体機能・起居動作: 麻痺、関節の動き、寝返り、起き上がり、歩行など(13項目)
  • 生活機能: 食事、排泄、衣服の着脱、外出、意思伝達など(12項目)
  • 認知機能: 意思の伝達、日課理解、短期記憶、名前を答える、今の季節を理解するなど(9項目)
  • 精神・行動障害: 被害妄想、作話、感情の不安定、昼夜逆転、徘徊、暴言暴行など(15項目)
  • 社会生活への適応: 薬の内服、金銭管理、集団への適応、買い物、簡単な調理など(6項目)

[図解2: 認定調査の流れ]

認定調査で失敗しないための3つのコツ

多くの家族が陥る失敗があります。それは「いつもより元気に振る舞ってしまう」ことです。本人が調査員の前で気を張ってしまい、ふだんできないことを「できる」と答えてしまうケースが後を絶ちません。実際の様子より軽く判定されると、必要なサービスが使えなくなります。

コツ1: 家族が必ず同席し、補足する 本人が「できる」と答えても、家族が「週に3回は転びます」「1人では風呂に入れません」と具体的に補足してください。調査員は家族の申告も重要視します。

コツ2: 困りごとのメモを事前に用意する 直近2週間の出来事を日記形式で記録しておきましょう。「○月○日、道を間違えて帰れなくなった」「○月○日、排泄を失敗した」など、具体的な事実が判定の重要な材料になります。

コツ3: 特記事項欄に必ず書いてもらう 74項目の選択肢に当てはまらない状況や、頻度・程度の違いは「特記事項」欄に記載されます。ここに具体的なエピソードが書かれるかどうかで判定が変わることもあります。遠慮せず伝えましょう。

Step 4: 主治医意見書

申請と同時に、市区町村から本人のかかりつけ医へ「主治医意見書」の作成依頼が送られます。主治医意見書には次のような内容が記載されます。

  • 傷病に関する意見(診断名、症状の経過、治療内容)
  • 特別な医療(点滴、透析、インスリン、酸素療法など)
  • 心身の状態(認知症の中核症状、BPSD、身体状態)
  • 生活機能とサービスに関する意見

かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師を受診することになります。申請前に受診歴を確認し、直近で診察を受けた医療機関を伝えておくと手続きがスムーズです。

Step 5: 審査判定

認定調査と主治医意見書が揃うと、二段階の判定が行われます。

一次判定(コンピュータ判定) 全国共通ソフトに74項目と主治医意見書の情報を入力し、要介護認定等基準時間を算出。機械的に要介護度の候補が出されます。

二次判定(介護認定審査会) 保健・医療・福祉の専門家5名程度で構成される介護認定審査会が、一次判定結果と特記事項・主治医意見書を総合的に検討し、最終的な要介護度を決定します。

Step 6: 結果通知

申請から原則30日以内に、認定結果通知書と**介護保険被保険者証(要介護度欄記載済み)**が郵送されます。結果は次の8区分のいずれか。

[図解3: 要介護度の段階と区分支給限度額]

区分 状態の目安 区分支給限度額(月額)
非該当(自立) 介護不要 サービス利用不可
要支援1 日常生活はほぼ自立、一部予防的支援が必要 約50,320円(5,032単位)
要支援2 要支援1より支援が必要、要介護になるおそれ 約105,310円(10,531単位)
要介護1 部分的な介護が必要 約167,650円(16,765単位)
要介護2 軽度の介護が必要 約197,050円(19,705単位)
要介護3 中度の介護が必要、ほぼ全介助が必要な場面あり 約270,480円(27,048単位)
要介護4 重度の介護が必要 約309,380円(30,938単位)
要介護5 最重度、ほぼ全介助 約362,170円(36,217単位)

※1単位=約10円(地域により10.00〜11.40円)。上記は1級地以外の目安。 ※自己負担1割の方は、上記金額の10分の1が実質の支出です。

認定の有効期間は新規申請で原則6か月、更新申請で12か月(最長48か月)。期間満了前に更新手続きが必要です。更新忘れに注意してください。

結果に納得できない場合の対処法

「寝たきりなのに要介護2しか出なかった」「認知症が進んでいるのに要支援2と言われた」——こうした不服がある場合、以下の選択肢があります。

① 区分変更申請 心身の状態が変わったとして、有効期間中でも再申請できます。費用は無料。申請から結果までまた30日程度かかります。

② 不服申立て(審査請求) 都道府県の介護保険審査会に審査請求できます。通知を受け取った翌日から3か月以内が原則。ただし判断が覆るケースは少なく、より早い ① の区分変更申請が現実的です。

より詳しい流れは 要介護認定の流れを図解で解説|申請から結果通知まで何日かかる? で解説しています。

使える制度一覧 — 要介護度別に何が使えるか {#section-services}

ここでは介護保険で使える全サービスを、カテゴリ別に整理します。「これだけ選択肢がある」と知っておけば、ケアマネとの打ち合わせで希望を出しやすくなります。

居宅サービス(在宅で受ける)

在宅で暮らしながら使える主なサービスです。

サービス名 内容 対象 自己負担の目安(1割)
訪問介護(ホームヘルプ) ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴・排泄介助等)や生活援助(買い物・掃除・調理)を提供 要介護1〜5 身体介護30分未満 約250円/回、生活援助20分以上45分未満 約180円/回
訪問看護 看護師が自宅を訪問し、医療的ケア(血圧測定、点滴、褥瘡処置、服薬管理等)を実施 要支援1〜要介護5 訪問看護30分未満 約470円/回
訪問入浴介護 専用浴槽を自宅に運び入れ、3人体制で入浴介助 要介護1〜5 約1,260円/回
訪問リハビリテーション 理学療法士・作業療法士が自宅で機能訓練 要支援1〜要介護5 20分あたり 約310円
通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、入浴・食事・機能訓練・レクリエーション 要介護1〜5 7〜8時間利用で 約750〜1,150円/回
通所リハビリ(デイケア) 医療施設併設の日帰りリハビリ 要支援1〜要介護5 7〜8時間利用で 約850〜1,200円/回
短期入所生活介護(ショートステイ) 数日〜最大30日、施設に短期入所 要介護1〜5 要介護3併設型多床室 約770円/日+食費・滞在費
短期入所療養介護 医療対応が必要な方向けの短期入所 要介護1〜5 要介護3併設型多床室 約880円/日+食費・滞在費
特定施設入居者生活介護 介護付有料老人ホーム等での介護 要介護1〜5 要介護3 約670円/日+居住費・食費

[図解4: 居宅サービスの選び方フローチャート]

組み合わせ例(要介護2・単身在宅): 訪問介護 週3回(買い物・掃除・入浴介助)+ 通所介護 週2回 + 訪問看護 週1回 + 福祉用具貸与(歩行器)= 月額自己負担 約15,000〜20,000円(1割負担の場合)

施設サービス(長期入所する)

終の住処として、または在宅が難しくなったときに検討する施設です。

施設種類 特徴 入所条件 月額目安(多床室・要介護3)
特別養護老人ホーム(特養) 公的施設、終身入所可、最も安価、待機者多い 原則要介護3以上、特例で要介護1・2も 約8〜13万円
介護老人保健施設(老健) 在宅復帰を目指すリハビリ中心施設、医師常駐、原則3〜6か月 要介護1以上 約8〜14万円
介護医療院 長期療養と生活支援を兼ねる、医療的ケア対応 要介護1以上 約9〜15万円

月額には**介護サービス費(1〜3割負担)**に加え、居住費(室料・光熱水費)食費 が含まれます。後述の「特定入所者介護サービス費(補足給付)」で居住費・食費の減額を受けられる方も多いので、申請を忘れないようにしましょう。

地域密着型サービス(住み慣れた地域で)

原則、その市区町村の住民だけが使えるサービスです。

サービス名 内容 対象
小規模多機能型居宅介護 1事業所で「通い」「訪問」「宿泊」を組み合わせる 要介護1〜5
看護小規模多機能型居宅介護 上記に訪問看護を加えた医療対応型 要介護1〜5
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の方9名程度で共同生活 要支援2・要介護1〜5
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 24時間対応、1日複数回の短時間訪問 要介護1〜5
認知症対応型通所介護 認知症専門のデイサービス 要介護1〜5
地域密着型特別養護老人ホーム 定員29名以下の小規模特養 原則要介護3以上
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 小規模な特養入所 原則要介護3以上

独居の方や、夜間も不安な方には定期巡回・随時対応型が有力な選択肢です。夜中に転倒した場合などもコールで呼べます。

福祉用具・住宅改修 — 環境を整える

在宅介護を支える重要な制度です。忘れがちですが、効果が大きい分野です。

福祉用具貸与(レンタル) — 車いす、介護ベッド、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり(工事不要)、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置など13品目がレンタル対象。原則要介護2以上で全品目対象、要支援1・2と要介護1は手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえなど軽度用具のみ。

特定福祉用具販売 — 腰掛便座(ポータブルトイレ等)、自動排泄処理装置の交換可能部、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具は衛生上レンタルに馴染まないため購入補助。年間10万円まで(自己負担1〜3割)。

住宅改修費支給 — 手すり設置、段差解消、床材変更(滑り防止)、引き戸等への扉交換、和式便器から洋式便器への取替、その付帯工事。上限20万円(自己負担1〜3割で、残りが支給)。工事前の事前申請が必須。

詳しくは 介護保険 住宅改修費の申請方法|手すり設置・段差解消に最大20万円 をご覧ください。

費用軽減制度 — 「払いすぎ」を防ぐ4つの制度

介護保険には「使った費用が高額になったときに払い戻す制度」が複数あります。申請主義なので、自動では払い戻されません。必ず申請してください。

制度名 概要 対象者
高額介護サービス費 1か月の自己負担が所得別上限を超えたら超過分を払戻 全員
特定入所者介護サービス費(補足給付) 施設入所・ショートステイの食費・居住費を軽減 住民税非課税世帯等
高額医療・高額介護合算療養費 医療+介護の年間合算で上限を超えたら払戻 全員
社会福祉法人等による利用者負担軽減 社会福祉法人のサービス費・食費・居住費を1/4軽減 住民税非課税世帯等

[図解5: 費用軽減制度の適用フロー]

高額介護サービス費の上限額(2026年度時点)

所得区分 上限額(月額・世帯)
生活保護等、利用者負担を15,000円に減額することで生活保護を必要としない方 15,000円
世帯全員が住民税非課税(老齢福祉年金受給者、前年合計所得金額+年金収入80万円以下等) 24,600円(世帯)/ 15,000円(個人)
世帯全員が住民税非課税(上記以外) 24,600円
一般(市町村民税課税〜課税所得380万円未満、年収約770万円未満) 44,400円
課税所得380万円〜690万円未満(年収約770万〜約1,160万円) 93,000円
課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上) 140,100円

詳しい計算方法・申請書の書き方は 高額介護サービス費の申請方法・計算方法を解説|所得別の上限額一覧 をご覧ください。

特定入所者介護サービス費(補足給付)

施設入所やショートステイでは、介護サービス費(1〜3割負担)に加え、食費と居住費が自己負担になります。住民税非課税世帯など低所得者は、申請により食費・居住費が段階別に軽減されます。申請先は市区町村の介護保険課。認められると「負担限度額認定証」が交付され、施設に提示して使います。

詳しくは 特定入所者介護サービス費とは?食費・居住費の負担を軽くする制度 をご覧ください。

働く家族のための制度 — 介護離職を防ぐ

介護は数年〜10年以上続くことも珍しくありません。仕事を辞めずに介護を続けるためのセーフティネットを知っておきましょう。

  • 介護休業: 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割可。取得中は介護休業給付金(賃金の67%、ハローワーク経由で雇用保険から支給)
  • 介護休暇: 対象家族1人につき年5日(2人以上は10日)、時間単位取得可、2025年4月以降は2週間以上の雇用で取得可
  • 所定外労働・時間外労働の制限: 要介護状態の家族がいる労働者が請求できる
  • 短時間勤務等の措置: 事業主に3年以上の措置義務
  • 転勤への配慮: 育児・介護休業法に配慮義務

詳しい申請手順は 介護休業給付金の申請方法|賃金の67%が最大93日間支給 をご覧ください。

介護費用の目安 — いくらかかるのか? {#section-cost}

「結局、毎月いくらかかるのか?」——ここが最大の関心事です。現実的な数字でお伝えします。

在宅介護の平均月額

生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」および厚生労働省「介護給付費等実態統計」をもとにした、在宅介護1か月あたりの平均支出は次のとおりです(介護保険自己負担+保険外費用の合計)。

要介護度 月額平均(自己負担+自費サービス) 年間
要支援1・2 約3〜5万円 約36〜60万円
要介護1 約5〜7万円 約60〜84万円
要介護2 約6〜8万円 約72〜96万円
要介護3 約7〜10万円 約84〜120万円
要介護4 約9〜12万円 約108〜144万円
要介護5 約10〜15万円 約120〜180万円

上限まで使い切ったとしても、自己負担1割なら要介護5で月約36,000円です。実際には上限を使い切らず、6〜7割程度の利用が全国平均です。

加えて、紙おむつ代・通院交通費・栄養補助食品・訪問理美容・配食サービスなど保険外費用が月1〜3万円発生するのが一般的です。

施設介護の月額

施設介護は多床室か個室か所得段階で大きく変わります。下表は要介護3・1割負担の方の目安です。

施設種類 部屋タイプ 月額目安(1割負担+食費・居住費)
特別養護老人ホーム 多床室(相部屋) 約8〜11万円
特別養護老人ホーム ユニット型個室 約13〜16万円
介護老人保健施設 多床室 約9〜12万円
介護老人保健施設 個室 約13〜15万円
介護医療院 多床室 約10〜14万円
民間介護付有料老人ホーム 個室 約15〜30万円(+入居一時金)
サービス付き高齢者向け住宅 個室 約13〜25万円(家賃+サービス費等)

[図解6: 在宅介護 vs 施設介護のコスト比較]

住民税非課税世帯の方が特定入所者介護サービス費(補足給付)を申請すると、多床室の特養で月6〜8万円まで下がることが多いです。申請の有無で年間30〜50万円違う世界があります。

介護保険料 — 自分が毎月払う額

65歳以上の第1号被保険者の保険料は、お住まいの市区町村によって異なります。第9期(2024〜2026年度)の全国平均は月額 6,225円(厚生労働省 2024年公表)。年金から特別徴収(天引き)されるケースが多く、所得段階に応じて原則9〜13段階に細かく分けられています。

40〜64歳の第2号被保険者は医療保険料に上乗せして納付。全国健康保険協会(協会けんぽ)加入者の介護保険料率は1.59%(2025年3月〜、労使折半)です。

介護にかかる総額の目安

生命保険文化センターの調査では、介護期間の平均は約5年1か月、月額平均8.3万円、介護のための一時費用(住宅改修・介護ベッド購入等)平均74万円。合計すると、1人あたり生涯でかかる介護費用は平均約580万円という試算もあります。

これは平均値で、要介護度・在宅か施設か・どれだけ軽減制度を活用できるかで実額は大きく異なります。「使える制度を知っているかどうか」で、生涯費用が100万円以上変わるのが現実です。

費用を抑える7つの方法

  1. 高額介護サービス費を必ず申請(多くの方は自動振込の申請書が市区町村から届きますが、初回は要申請)
  2. 特定入所者介護サービス費(補足給付)を申請(非課税世帯のみ)
  3. 確定申告で医療費控除を活用(訪問看護・通所リハビリ・おむつ代(医師の証明書が必要)等は対象)
  4. 高額医療・高額介護合算療養費を申請(医療費と介護費の年間合算)
  5. 福祉用具は購入よりレンタルを基本に(要介護度が変わると必要なものも変わる)
  6. 住宅改修費支給で早めに段差解消(転倒で要介護度が進むと費用が跳ね上がる)
  7. 自治体独自の軽減制度を調べる(紙おむつ支給、配食サービス補助、緊急通報装置等)

自治体独自の制度は、お住まいの市区町村のホームページや地域包括支援センターで確認できます。全国で数十種類の独自制度があり、知らずに使わずにいる家庭が多いのが実情です。

申請の流れ — 何をどの順番で? {#section-choice}

全体像を時系列で俯瞰しましょう。

[図解7: 介護開始までのタイムライン(申請〜サービス利用開始)]

最短でサービス利用開始まで約30〜45日

日数 ステップ 誰が 何をする
1日目 相談 家族 地域包括支援センターに電話
2〜7日目 申請 家族または代行 市区町村介護保険課に申請書提出
7〜14日目 認定調査 調査員が自宅訪問 74項目の聞き取り
7〜30日目 主治医意見書 主治医 市区町村へ直接提出
25〜30日目 審査判定 介護認定審査会 二次判定
30日目 結果通知 市区町村 認定結果が郵送で到着
30〜35日目 ケアマネ選定 家族 居宅介護支援事業所に依頼
35〜40日目 ケアプラン作成 ケアマネ アセスメント→プラン案作成
40〜45日目 サービス担当者会議 関係者全員 プラン最終調整
45日目〜 サービス利用開始 事業所 訪問・通所等の開始

在宅介護を選ぶ場合のロードマップ

  1. 地域包括支援センターに相談(認定前から相談可)
  2. 要介護認定の申請(市区町村介護保険課)
  3. ケアマネジャーの選定 — 居宅介護支援事業所に連絡。合わなければ途中で変更可。変更は何回でも無料
  4. アセスメント(本人・家族の状況把握)
  5. ケアプラン案の提示・修正
  6. サービス担当者会議(関係者が集まり最終調整)
  7. 契約・サービス利用開始
  8. モニタリング(月1回以上、ケアマネが訪問)
  9. 状況変化時はケアプラン変更

要支援1・2の方は、地域包括支援センターの保健師・社会福祉士が介護予防ケアプランを作成します(無料)。

施設入所を検討する場合のロードマップ

  1. 要介護認定の申請(多くの施設は要介護1以上、特養は原則要介護3以上)
  2. 施設の種類を理解する(前掲の表参照)
  3. 施設見学(必ず3か所以上を比較。「何曜日の何時に行くか」で見える景色が違う)
  4. 入所申し込み(特養は複数施設への同時申込が定石。申込書の書き方で優先順位が変わる)
  5. 入所判定会議(各施設が要介護度・介護者の状況・緊急度を総合評価)
  6. 待機(特養は都市部で数か月〜数年、地方は比較的短い)
  7. 入所前面談・契約
  8. 入所

特養の待機中は、ショートステイや小規模多機能の活用で家族の負担を軽減できます。「空き待ち」の間に共倒れしないよう、在宅サービスを組み合わせることが重要です。

よくある質問(FAQ) {#section-faq}

Q1. 介護が必要になったら、まず何をすればいい? A. まずは地域包括支援センターに電話してください。「介護について相談したい」と伝えるだけでOKです。無料で、予約なしでも対応してくれます。その後の要介護認定申請やサービス利用の流れも一緒に並走してくれます。

Q2. 要介護認定の申請は本人がしないといけない? A. いいえ、家族や代行者が申請できます。地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、介護保険施設が代行申請可能です。多くの自治体では郵送申請にも対応しています。本人が動けない場合は遠慮なく代行を依頼してください。

Q3. 要介護認定にはどのくらい時間がかかる? A. 申請から原則30日以内に結果が通知されます(介護保険法第27条)。主治医意見書の遅れなどで40日程度かかることもあります。緊急性が高い場合は「暫定ケアプラン」で先行的にサービスを利用できます。

Q4. 認定結果に納得できない場合はどうする? A. 2つの選択肢があります。区分変更申請(再度の認定調査を受ける、費用無料、結果まで約30日)と、不服申立て(審査請求)(都道府県の介護保険審査会へ、通知から3か月以内)。判断が覆る可能性は前者のほうが現実的で早いです。

Q5. 介護保険料はいくらくらい? A. 65歳以上の第1号被保険者の第9期全国平均は月額6,225円(2024〜2026年度、厚生労働省公表)。市区町村・所得段階により1,500円〜13,000円程度と大きな幅があります。年金からの天引き(特別徴収)が基本です。

Q6. 40〜64歳でも介護保険は使える? A. 加齢に伴う特定疾病(16疾病)に該当する場合のみ利用できます。末期がん、関節リウマチ、ALS、若年性認知症、パーキンソン病、脳血管疾患などが対象です。特定疾病でない障害(例:交通事故後遺症)は、障害者総合支援法の介護給付が窓口となります。

Q7. ケアマネジャーはどうやって探す? A. 地域包括支援センターに相談すると、近隣の居宅介護支援事業所リストをもらえます。3か所程度に電話して話しやすさで選ぶのがコツ。相性が合わなければ途中で変更も可能(何度でも無料)。医療ニーズが高い場合は訪問看護ステーション併設の事業所が安心です。

Q8. 介護と仕事は両立できる? A. できます。介護休業(通算93日、給付金は賃金の67%)、介護休暇(年5日、時間単位可)、時短勤務や時間外労働の制限など、育児・介護休業法で保護されています。勤務先の人事部に「介護休業制度を使いたい」と伝えてください。ハローワークでの手続きが必要です。

Q9. 遠距離介護はどうすればいい? A. 遠距離介護の鉄則は「ケアマネと地域包括支援センターに早期連携」「IoT見守り機器活用」「帰省費用の交通費補助(JAL・ANAの介護割引、新幹線の障害者割引等)」「地域のインフォーマルサポート(民生委員・近隣住民)活用」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護で24時間体制を確保」の5つです。1人で抱え込まないことが最重要です。

Q10. 介護費用は医療費控除の対象になる? A. 一部対象です。訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・短期入所療養介護・介護医療院・介護老人保健施設のサービス費や食費・居住費は医療費控除対象。おむつ代は医師の「おむつ使用証明書」があれば対象。領収証は7年間保管し、確定申告時にまとめて控除申請します。

Q11. 介護保険制度は今後どう変わる? A. 次期制度改正は**2027年度(第10期)**を予定しています。検討課題として、2割負担対象者の拡大、ケアマネジメントの有料化(現在は全額公費)、訪問介護の生活援助部分の総合事業移行、軽度者向けサービスの見直しなどが議論されています。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の動向を注視してください。

Q12. 家族が認知症かもしれない、どこに相談? A. まずは地域包括支援センター、並行してかかりつけ医へ。地域包括支援センターには認知症地域支援推進員が配置されています。「認知症初期集中支援チーム」が自宅訪問してくれる自治体もあります。診断には物忘れ外来(もの忘れ外来)・精神科・神経内科が適切。診断が早いほど本人の意思決定能力があるうちに今後の方針を決められます。

まず今日やること {#section-action}

今日できる3つのアクション(所要時間30分)

アクション1: 地域包括支援センターの電話番号を調べる(所要5分)

お住まいの地域の地域包括支援センターを検索し、電話番号をスマホのメモに保存しましょう。 検索ワード: {お住まいの市区町村名} 地域包括支援センター

中学校区ごとに設置されているため、本人の住所地を管轄する窓口を探してください。市区町村のホームページに一覧があります。

アクション2: 現在の状態をメモする(所要15分)

以下のチェックリストに○×で記入して、相談時に持参してください。スマホのメモでOKです。

日常生活の状態チェック

  • 食事は自分でできるか(調理・配膳含む)
  • トイレは自分で行けるか、失敗はないか
  • 入浴は自分でできるか、洗髪はできるか
  • 着替えは自分でできるか(ボタン・靴下含む)
  • 外出は自分でできるか、道に迷わないか
  • 買い物は自分でできるか、金銭管理はできるか
  • 薬の管理はできるか、飲み忘れはないか
  • 電話の応対や家事はできるか

認知機能の状態チェック

  • 物忘れが明らかに増えたか(いつから?)
  • 日時(曜日・月)がわからなくなることがあるか
  • 同じ話を何度もするようになったか
  • 性格が変わったと感じるか(怒りっぽい、無気力等)
  • 火の消し忘れや水の出しっぱなしが増えたか

家族の状況チェック

  • 主な介護者は誰か(続柄・年齢・同居別居)
  • 介護者の就労状況(フルタイム・パート・無職)
  • 介護できる時間帯(平日昼間は?夜間は?)
  • 近隣に頼れる親族はいるか
  • 本人の経済状況(年金額・預貯金の概算)

アクション3: 地域包括支援センターに電話する(所要10分)

アクション1・2を踏まえ、電話しましょう。言うべきことはたった一言

「介護のことで相談したいのですが、どうすればよいですか」

これだけで大丈夫です。担当者が必要なことを聞いてくれます。緊張する方は、以下の台本を横に置いて電話してください。

「もしもし、相談したいことがあります。私は○○市に住む○○(氏名)です。 母(父/祖父/祖母)の介護のことで、どこから始めればよいかわからず電話しました。 母は○○区に住んでいて、最近○○ができなくなってきました。 訪問して相談に乗っていただくことはできますか?」

包括の職員は毎日このような電話を何十件と受けています。恥ずかしいことも、申し訳ないことも一切ありません。早く相談するほど、使える選択肢は多くなります。

今週やること

  • 主治医の連絡先をメモ(医療機関名、電話番号、次回受診日)
  • 介護保険被保険者証を探して保管場所を家族で共有(紛失時は市区町村で再発行)
  • 本人の預貯金・年金の状況を把握(通帳・年金振込通知書の場所確認)
  • 兄弟姉妹で役割分担を決める(金銭管理・通院付き添い・ケアマネ対応等)

今月やること

  • 要介護認定の申請(地域包括支援センター経由または市区町村介護保険課直接)
  • 会社に介護休業制度の有無を確認(就業規則または人事部)
  • 介護者自身の健康チェック(介護は数年続く。介護者の体調管理が最優先)
  • 家族会議で今後の方針を共有(在宅か施設か、誰が何を担当するか)

やってはいけないこと

  • 1人で抱え込む — 共倒れの原因。必ず専門家と共有
  • 認定を待たずにサービス事業所に直接連絡 — 認定前は全額自費
  • 「家族が介護すべき」と自分を責める — 介護保険は「社会で支える」制度
  • ネット情報だけで判断 — 個別事情は専門家でないと判断できない
  • 金銭管理を後回しにする — 認知症が進むと本人が手続きできなくなる

おわりに — 最初の電話が最大の一歩

ここまで読み切ったあなたは、介護保険制度の全体像をすでに把握しています。あとは電話を1本かけるだけです。完璧に理解してから動く必要はありません。地域包括支援センターの職員が、その後の道筋を並走してくれます。

今、手にしているスマホで、地域包括支援センターの電話番号を検索してください。 それがこの記事を読んだ最大の成果です。

この記事は2026年4月時点の情報です。 制度の内容・金額は改定される場合があります。最新情報は以下の公式情報源でご確認ください。

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本記事は情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の判断は地域包括支援センター、ケアマネジャー、弁護士・社労士等の専門家にご相談ください。