介護保険負担割合証を一言で言うと: 介護サービスを使うときの自己負担が「1割・2割・3割」のどれになるかが書かれた、毎年8月1日から有効になる大事な証書です。 対象者: 要介護認定・要支援認定を受けているすべての人 メリット: 事前に負担割合を知ることで、年間の介護費用を正確に見積もれる。
「毎年7月末に『介護保険負担割合証』という紙が届くけど、これ何? 今年から2割に上がったって本当?」
この記事では、介護保険の自己負担割合がどう決まるのか、所得別の具体的な判定基準、負担割合証の見方と紛失時の対応まで、厚生労働省の公式情報と介護保険法(第49条の2・第59条の2)にもとづいて図解で解説します。
たった一行「2割」か「3割」かで、年間の介護費用は20万〜40万円以上変わります。自分が正しい割合なのか、必ず確認してください。
介護保険負担割合証とは
介護保険負担割合証(かいごほけん・ふたんわりあいしょう)は、要介護認定または要支援認定を受けた人全員に、市区町村から毎年交付される証書です。介護サービスを使ったときに、利用料のうち何割を自分で支払うかが「1割」「2割」「3割」のいずれかで記載されています。
ポイント
- 目的: サービス事業所が利用料を請求する際の、自己負担割合を明確にする
- 根拠法令: 介護保険法 第49条の2(一定以上の所得を有する要介護被保険者に係る居宅介護サービス費等の額)、同法 第59条の2(要支援被保険者に係る介護予防サービス費等の額)、介護保険法施行令 第22条の2の2
- 管轄: お住まいの市区町村(介護保険課)
- 導入時期: 2割負担は2015年(平成27年)8月、3割負担は2018年(平成30年)8月から
田中さん(世田谷区・78歳・年金収入290万円・単身)の例: 年金が280万円を超えているため、負担割合は「2割」。毎月デイサービス週2回+ヘルパー週3回で月額サービス費15万円を使うと、月の自己負担は3万円。1割判定だった人と比べ、年間で18万円多く払う計算になります。
介護保険負担割合証の見本
負担割合証には最低限、次の項目が記載されます:
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名・生年月日 | 被保険者本人 |
| 被保険者番号 | 介護保険被保険者証と同じ番号 |
| 利用者負担の割合 | 「1割」「2割」「3割」のいずれか |
| 適用期間 | 8月1日〜翌年7月31日 |
| 交付年月日 | 通常7月中旬〜下旬 |
| 保険者名 | 市区町村名 |
対象者 — 誰にどの割合が適用される?
全員が対象
要介護1〜5、要支援1〜2のいずれかの認定を受けている人全員に、毎年交付されます。介護保険被保険者証(ピンク色の横長カード)とは別物なので、2枚セットで保管してください。
割合別の判定基準(2026年度時点)
2割・3割負担の対象者は、65歳以上の第1号被保険者のみです。40歳〜64歳の第2号被保険者は、所得に関わらず全員1割負担です。
重要: 所得判定は「本人の合計所得金額」と「世帯の年金収入+その他の合計所得金額」の両方の条件を満たす必要があります。どちらか一方だけでは該当しません。
3割負担(約4%の人が該当)
以下を両方満たす65歳以上の方:
- 本人の合計所得金額が 220万円以上
- かつ、同一世帯の65歳以上の「年金収入+その他の合計所得金額」が
- 単身世帯: 340万円以上
- 2人以上世帯(本人+65歳以上の家族合算): 463万円以上
2割負担(約16%の人が該当)
以下を両方満たす65歳以上の方(ただし3割に該当しない方):
- 本人の合計所得金額が 160万円以上
- かつ、同一世帯の65歳以上の「年金収入+その他の合計所得金額」が
- 単身世帯: 280万円以上
- 2人以上世帯: 346万円以上
1割負担(約80%の人が該当)
上記2割・3割の条件に該当しない方すべて。具体的には:
- 本人の合計所得金額が160万円未満
- または、世帯の年金収入+その他の合計所得金額が基準未満
- 40歳〜64歳の第2号被保険者(特定疾病で認定された方)
- 住民税非課税世帯の方
対象者チェックリスト(自分は何割か?)
年金振込通知書と源泉徴収票を用意して、以下に○×をつけてください。
- ① 本人(被保険者)の「合計所得金額」は 220万円以上 ですか?
- ② 本人の「合計所得金額」は 160万円以上 ですか?
- ③ 世帯内の65歳以上の人全員の「年金収入(公的年金等)+その他の合計所得金額」は、単身340万円以上 / 2人以上463万円以上 ですか?
- ④ 上記③の合計は、単身280万円以上 / 2人以上346万円以上 ですか?
判定フロー
- ①と③が両方YES → 3割負担
- 3割に該当しない人で ②と④が両方YES → 2割負担
- それ以外 → 1割負担
判定に使う「所得」の正しい計算方法
ここが最も間違えやすいポイントです。「年収」や「手取り」ではなく、専門的な用語が使われます。
合計所得金額とは
合計所得金額=総所得金額等から、繰越損失控除を適用する前の金額。
- 給与所得(給与収入 − 給与所得控除)
- 公的年金等に係る雑所得(年金収入 − 公的年金等控除)
- 事業所得、配当所得、不動産所得など
- 長期譲渡所得・短期譲渡所得の特別控除額を差し引く前の金額
ポイント: 2018年8月以降、住民税の計算で使う「長期・短期譲渡所得の特別控除」は負担割合の判定でも差し引いてよい扱いに変更されました。一時的に土地を売った年でも、控除後で判定されます。
年金収入+その他の合計所得金額とは
年金収入: 公的年金等(国民年金、厚生年金、共済年金、企業年金など)の収入金額(控除前の額面)。 その他の合計所得金額: 合計所得金額から「公的年金等に係る雑所得」を除いたもの。
つまり、年金は「収入そのまま」、その他の所得は「必要経費・控除を差し引いた後」の金額を合算します。
計算例
例1: 単身・年金のみ受給の田中さん(78歳)
- 公的年金収入: 年額 290万円
- その他の所得: なし
計算:
- 公的年金等控除額: 110万円(65歳以上、年金収入330万円未満の場合)
- 本人の合計所得金額: 290万 − 110万 = 180万円(160万円以上・220万円未満)
- 年金収入+その他の合計所得金額: 290万 + 0 = 290万円(単身・280万円以上・340万円未満)
→ 2割負担
例2: 夫婦世帯・年金+不動産収入の佐藤さん(80歳夫)
- 夫の公的年金収入: 240万円
- 夫の不動産所得(経費差引後): 60万円
- 妻(75歳)の公的年金収入: 80万円
計算:
- 夫の合計所得金額: (240万 − 110万) + 60万 = 190万円(160万以上・220万未満)
- 世帯の「年金収入+その他の合計所得金額」: (240 + 60) + 80 = 380万円(2人以上・346万以上・463万未満)
→ 夫は 2割負担、妻は夫の負担割合に関わらず本人の所得で別判定(妻の合計所得は80万−110万(公的年金等控除)<0円のため、妻は自動で1割)
例3: 高所得世帯の山田さん(単身・82歳)
- 公的年金収入: 360万円
- 配当所得(申告分離): 80万円
- 株式譲渡所得: 100万円(長期)
計算:
- 本人の合計所得金額: (360万 − 110万) + 80万 + 100万 = 430万円(220万以上)
- 年金収入+その他の合計所得: 360万 + (80万 + 100万) = 540万円(単身・340万以上)
→ 3割負担
負担割合の違いでいくら変わる? 金額シミュレーション
月額サービス費別の自己負担比較
| 月額サービス利用料 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|
| 50,000円(要支援2・軽度の方) | 5,000円 | 10,000円 | 15,000円 |
| 167,650円(要介護1の区分支給限度額満額) | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
| 270,480円(要介護3の区分支給限度額満額) | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
| 362,170円(要介護5の区分支給限度額満額) | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
※ 実際は区分支給限度額を超えると超過分は全額自己負担。ただし高額介護サービス費制度により、月の自己負担には所得別上限(例:一般区分 月44,400円)があり、上限を超えた分はあとで還付されます。
詳しくは高額介護サービス費の申請方法をご覧ください。
年間の差額は?
要介護3の方がサービスを毎月フル活用した場合(月額27万円前後):
- 1割 → 2割に変わる: 年間 約32万円 自己負担増
- 1割 → 3割に変わる: 年間 約65万円 自己負担増
ただし高額介護サービス費の月額上限(一般的な所得区分で月44,400円)があるため、実際の自己負担増はここまで大きくならないケースが多いです。
負担割合はどう決まる? — 交付の流れ
判定の時系列
前年1月〜12月 今年6月 今年7月中〜下旬 今年8月1日 ├────────────────┤ ├──────┤ ├─────────────┤ │ 所得発生 住民税確定 負担割合決定& 新しい割合で (所得税申告対象) (6月本算定) 負担割合証を発送 サービス利用開始 (郵送で届く) (翌年7月31日まで)Step 1: 市区町村が住民税情報を参照
市区町村は、毎年6月の住民税決定後に、要介護・要支援認定者の所得情報を集計します。前年1月〜12月の所得(=今年の住民税で確定した所得)が判定材料です。
Step 2: 負担割合を自動判定
本人の合計所得金額と世帯の年金収入+その他所得を機械的に当てはめ、1/2/3割を決定します。本人の申請は不要です。
Step 3: 負担割合証を世帯に郵送
通常7月中旬〜下旬に、被保険者全員に郵送されます(封筒は「介護保険」と書かれている市区町村が多い)。
Step 4: 8月1日から新しい割合が適用
介護サービス事業所(ケアマネジャー、デイサービス、訪問介護等)は、8月1日以降のサービス利用時に新しい負担割合証の提示を求めます。ケアマネジャーにもコピーを渡すのが一般的です。
途中で割合が変わることはある?
割合が変わる主なケース
- 所得の変動: 退職により年金のみの生活になった場合など → 翌年8月1日から反映
- 世帯構成の変更: 配偶者の死亡、子との世帯分離、世帯合併 → 翌月の1日から反映(市区町村に届出)
- 住所変更(転入・転出): 転出先の市区町村が再発行
- 所得更正: 税務署や市区町村税務課で所得を修正した場合 → 遡及で再判定
世帯分離で負担割合が下がるケース
実例: 同居している息子(会社員・年収800万円)の負担割合証への影響はありません。負担割合の判定は65歳以上の世帯員のみで合算するため、65歳未満の子の所得は無関係です。一方で、75歳の母(年金280万円)と80歳の父(年金100万円)が同世帯 → 世帯合算346万円を超え2割。ここで世帯分離すれば、母は単身判定になり年金収入280万円→ちょうど基準額。調整で1割になる可能性があります。
ただし世帯分離は税金・医療保険・高額介護サービス費の判定にも影響するため、トータルで得か損かは必ずケアマネジャーや市区町村の介護保険課に相談してください。
負担割合証の疑問Q&A
Q1: 介護保険被保険者証との違いは? A: 被保険者証(ピンク色)は認定結果(要介護度・認定有効期間)が書かれています。負担割合証(白色など)は自己負担割合のみ。サービス利用時は両方の提示が必要です。
Q2: 負担割合証を紛失した場合は? A: お住まいの市区町村の介護保険課で再発行できます。本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)を持参してください。郵送申請に対応している自治体もあります。手数料は無料の自治体が大半です。
Q3: 負担割合に不服がある場合は? A: まずは市区町村の介護保険課に計算根拠を確認してください。住民税の所得情報に誤りがある場合は、住民税の更正申告をすれば負担割合も再判定されます。納得できない場合は、介護保険審査会に審査請求できます(処分があったことを知った日の翌日から3か月以内)。
Q4: 事業所に毎回提示する必要がある? A: 通常は新規契約時と負担割合が変わったときに事業所へコピーを提出します。毎回のサービス利用時に提示する必要はありませんが、担当ケアマネジャーは変更を把握している必要があります。
Q5: 負担割合証が届かない場合は? A: 7月末を過ぎても届かない場合、市区町村の介護保険課に問い合わせてください。住所変更届が出ていないと郵便局が返送している可能性があります。8月1日時点で負担割合証を提示できないと、事業所は暫定で2割または3割として請求することがあります。必ず手元に用意してください。
Q6: 住民税非課税なのに2割になった場合は? A: 住民税非課税でも、合計所得金額が160万円以上(例: 年金収入270万円以上の単身者)であれば2割判定になり得ます。住民税の計算では各種控除が差し引かれますが、負担割合判定では「合計所得金額」が使われるためです。詳細は市区町村の介護保険課へ確認してください。
Q7: 年度途中で所得が大幅に下がった場合、すぐに1割に下げられる? A: 原則できません。負担割合は前年の所得で1年間固定されます。生計が著しく困難な場合は、高額介護サービス費の「境界層該当者」制度や社会福祉法人等利用者負担軽減制度などの個別の救済制度が利用できる可能性があります。
あわせて活用したい制度
負担割合が2割・3割になった方ほど、以下の費用軽減制度の活用が重要です。
- 高額介護サービス費 — 月の自己負担上限を超えた分を後から還付(所得区分により月24,600円〜140,100円)
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定) — 施設入所・ショートステイの食費・居住費を軽減(1割〜3割負担と別枠で判定)
- 高額医療・高額介護合算療養費 — 医療費と介護費の年間合算が基準額を超えたら還付
- 区分変更申請 — 心身状態が変化した場合、要介護度の見直しで区分支給限度額を引き上げ
要介護度別・負担割合別の月額早見表
| 区分支給限度額 | 要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 限度額(単位) | 5,032 | 10,531 | 16,765 | 19,705 | 27,048 | 30,938 | 36,217 |
| 金額目安(1単位10円) | 50,320円 | 105,310円 | 167,650円 | 197,050円 | 270,480円 | 309,380円 | 362,170円 |
| 1割負担(限度額満額時) | 5,032円 | 10,531円 | 16,765円 | 19,705円 | 27,048円 | 30,938円 | 36,217円 |
| 2割負担 | 10,064円 | 21,062円 | 33,530円 | 39,410円 | 54,096円 | 61,876円 | 72,434円 |
| 3割負担 | 15,096円 | 31,593円 | 50,295円 | 59,115円 | 81,144円 | 92,814円 | 108,651円 |
※ 地域区分により1単位の単価は10円〜11.4円の幅があります。上記は全国平均の10円換算。
この記事は2026年4月時点の情報です。 介護保険法の改正により、2026年度(令和8年度)以降、2割負担の対象者拡大が検討されています。最新情報は厚生労働省の公式サイトまたはお住まいの市区町村の介護保険課にお問い合わせください。
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- 要介護認定の流れを図解で解説
参照した公的情報源
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 介護保険法(昭和九年法律第百二十三号)第49条の2、第59条の2
- 介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第22条の2の2
- e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)